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代表者メッセージ
物流コスト解析のススメ
高校1年生の夏休みに飛行機の操縦訓練を受けたことがあります。
実際に小型機の操縦桿を握って熊本の有明海の上空を何度も飛行したり、羽田の乗員訓練センターで旅客機のフライトシミュレータを使った実習を受けたりもしました。
その中で計器飛行というものを学んだのですが、これは文字通り外の景色を見て飛ぶのではなくコックピットの計器類だけを見て飛行するというものです。
20年ぐらい前に経営コックピットという考え方が流行ったことがありますが、これは計器飛行を経営に応用するということだと思います。
考え方自体は間違ってなかったのでしょうが如何せん経営コックピットの計器で表示される情報が基本的には決算データをグラフ化した程度のものが多かったため、流石にそれだけ見てても経営は難しいというのが当時の大半の人が持った印象だと思います。
時は変わって現代、物流の世界を取り巻く状況はまさに濃霧の中、飛行を続ける様な困難な時代になってしまいました。
先の見えない中、様々な障害物を避けながら目的を達成するためには物流の世界においても『計器飛行』が不可欠なものとなっているのではないでしょうか。
そして
物流における『計器飛行』の最重要メーターの一つは『物流コスト解析』にある
と思っています。
私は物流コスト解析の重要性に気づいて以来、多くの企業の方々にデータ解析ができるインフラの必要性を訴えてきました。
様々な制約条件の中で日夜、物流コスト削減に努力されている方々でそれ自体を否定される方はいませんでした。
一方、
物流コストはデータ解析しただけでは削減できない
のは事実です。
輸送、配送の共同化、モーダルシフト、容器改良、バース事前予約、手積み手卸ろし廃止、荷役ロボット導入等々、様々な施策を実行することで初めて改善を行うことができます。
しかし改善が実現された時、何をもってその効果を測るのでしょうか。
また改善施策の検討をする際、どういった基準でその優先順位を決めるのでしょうか。
連結財務諸表における物流コストの構造を改善施策との関係性で説明できますか。
本当は全ての物流コストが製品別、顧客別、輸配送ルート別といった様々な切り口で、それも時系列や複合的な分析軸の組み合わせで、いつでも分析、把握できることが必要なのではないでしょうか。
残念ながら
物流コストに関する分析、解析ができる”仕組み”を運用している企業の数は極く僅か
にしか過ぎません。
まるで激しく揺れる機体の計器の無いコックピットで、濃霧が立ち込める前方を凝視して、飛んでいる高度も分からず必死に操縦桿を握りしめているようなものです。
その理由について長い間考えてきましたが、おそらく、
かつては物流軽視の経営者が少なくなかったこと、
物流コストには製造原価における『原価計算基準』の様な確立された基準がないこと、
物流コストの精緻な計算が会計や税法で義務化されていないこと、
物流コストは社内外の多くのプレーヤーが複雑に絡んで刻々とその関係性が変化するためコスト構造の体系化が難しい
等々、様々な理由が考えられます。
もう一つ物流コストを精緻に把握する仕組みが発達して来なかった大きな理由として物流担当者の方々の
『コストデータ解析などでは物流の実態は判らない』、
という強い現場意識の表れも影響しているのではないでしょか。
使い古された”財務分析”で企業の全てが分かったような論調がある中、現場を預かる方々のこうした実態を重視する姿勢には深く共感を覚えるところです。
しかしこの状況を製造業の原価計算で例えると、
原価改善を強く進めたい工場が
何の基準もないまま
思いついた時だけ
つまみ食いの様な
原価集計を拠り所に
改善策を練るようなものであり、客観的なコスト改善の測定など望むべくもありません。
30年超のコンサルティングや会計監査で訪れた一定規模メーカーで原価計算システムを運用していない企業をこれまで一度も見たことはありませんが、多額の物流費を負担している企業でも物流コストに関しては何ら実態把握のためのシステムが存在していないのが実状です。
製造分野では『計器飛行(原価計算システム)』を活用した経営が当たり前に行われる
物流分野では『計器(物流コスト把握)』よりも操縦士の経験と勘が大事?
製造コストと物流コストで管理の仕方が全く異なる根本的な理由がありますか。
物流コストを継続的に把握、解析できるシステムを構築しない理由や背景を推測することはできても、その状態を放置し肯定することはどうしてもできません。
改めて強く訴えたいのは現場改善を全社における大きな成果に結びつけるためには、物流の数量データに裏打ちされたコストデータ解析による物流施策の評価、施策の実行結果のモニタリングは絶対に必要なものであるということです。
ここで補足させて頂くと、現代の経営管理レベルの一般的な水準から考えて
最低限必要なのは原価計算システムと同等の物流費計算システムを
物流分野におけるインフラとして運用する
ことにあります。
さらには物流費計算システムを常時運用するだけでなく、得られた輸送費、荷役費、保管費等の詳細データを活用し、
利益源泉である顧客、製品と物流との関係性を統計、数理解析的に解明し
連結グループにおけるサプライチェーンを最適化させる
ことで物流費計算システムの付加価値を大きくできます。
現在、物流の世界も急速にデジタル化が進展しており、従来は考えられなかったような物流ビックデータが利用できる環境に変わりつつあります。
これらビックデータとERPを始めとした基幹業務システムデータの両者を融合し、データサイエンスによる解析によってサプライチェーン再構築、最適な物流パートナーの選定、顧客への価格戦略の見直し等に繋がる多くのヒントを得ることができます。
物流改善、改革への強い意欲をもった企業の方々が当社の物流コスト解析を活用頂き一緒にタッグを組むことで、昨今の物流の世界を取り巻く様々な制約条件をクリアーし連結利益に直接インパクトをもたらすレベルの大きな成果を出すことを切に願っております。
株式会社LOGICOST 代表 遠藤 修介